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アクチュアリーの仕事内容と需要・試験について徹底解説

はじめに

保険会社や年金など人々の生活に欠かせない場面で活躍する数理業務の専門職を「アクチュアリー(actuary)」といいます。

確率論や統計学といった学問を専攻した人々の進路として人気があります。

アクチュアリーの仕事内容、アクチュアリーになるための必要な能力や、試験対策、実際の就職先などを説明し、この記事を読んだあとには、明日からアクチュアリーを目指すにあたっての実践が始められるようになります。

アクチュアリーとは

アクチュアリーとは、確率論や統計学といった数学的手法を用いて、将来のリスクを評価する専門家です。アクチュアリーを日本語に直すと「保険数理士」や「保険数理人」といいます。

主に保険分野で、人口調査、事故率、加えて気象情報や政治・経済動向など様々な統計データを収集して「保険料の算出」だったり「保険商品の作成」いった役割を担います。

日本でアクチュアリーになる為には、「日本アクチュアリー会」の正会員になる必要があります。正会員の資格は、アクチュアリー試験の全科目合格とプロフェッショナリズム研修の受講をすると取得できます。

この資格取得のためには最低2年、平均して8年かかると言われ難易度が非常に高い資格です。

アクチュアリーの仕事内容

アクチュアリーが関わる仕事は「生命保険」「損害保険」「年金」「リスクマネジメント」といった、人々の生活に密着した仕事です。それぞれの詳しい仕事内容について説明していきます。

生命保険分野での仕事

生命保険は、保険料を支払う代わりに被保険者が亡くなった時やケガを負った時に一定の金額を受け取ることができる保険です。

このことからもわかるように、生命保険は長期契約が主になります。金利や死亡率の変化など多くの点を考慮し結論を導き出すために、膨大な統計データと統計学が使われます。

契約する人は保険料が高すぎると契約してくれません。しかし、逆に安くしすぎると生命保険会社が損をしてしまう場合があります。

その微妙なバランスを考慮して、適切な保険料の保険を販売するために、綿密な契約をすることが生命保険分野でのアクチュアリーの仕事です。

損害保険分野での仕事

損害保険は、被保険者が自動車事故や地震などの”被害”に対する損害を補う保険です。

先ほどの生命保険とは異なり、短期的な契約が多いのが特徴です。

そのため金利や死亡率の変化などを考慮する必要はありませんが、リスクが多様でありまったく同じ契約は存在しないため、統計学を用いて数学的に処理をしていく必要があります。

このようなことから、企業が損害保険商品を販売するリスク管理のために、アクチュアリーが重要視されている傾向です。

年金分野での仕事

年金分野では、信託銀行でのアクチュアリーの仕事があります。

信託業務は、外部からの財産を自分名義で預かって運用することをいいます。アクチュアリーは主に年金分野で顧客企業より信託された資金を各年金制度に活用する業務が多く、年金の掛金設定や企業年金制度、退職給付債務などに関するコンサルティングをしています。

年金分野の業務では、アクチュアリーが直接お客様のもとへ出向くこともあり、円滑なコミュニケーションを取る必要があります。

リスクマネジメント分野での仕事

保険分野や年金分野以外にも、アクチュアリーは多方面で活躍の場があります。

例えば、企業価値評価やリスクマネジメント、デリバティブ商品の価格決定、市場リスク予想など多岐にわたります。特に近年では、企業が業務遂行上の様々なリスクに関して、組織全体を包括的に評価し、企業価値の最大化を図るERMでアクチュアリーの活躍が期待されています。

保険計理人

保険計理人とは、アクチュアリーの中でも一部の人に認められたもので、生命保険会社と一定の条件を満たす損害保険会社は取締役会で保険計理人を選任しなければなりません。

保険計理人には、保険会社が将来の保険金支払いのために十分な資金があることや、契約者配当などが公正かつ衡平に行われているかどうかなどの意見書を取締役会や金融庁長官に提出する業務があります。

保険計理人になるには、アクチュアリーの正会員になる他に、保険会社で保険数理業務を5年以上従事するなどの条件を満たさなければならず、保険業法に制定されているため金融庁の認定が必要です。

アクチュアリーの中でも豊富な業務経験を必要とします。

その他の分野での仕事

海外のアクチュアリーの中には、個人事業主としてコンサルティングを行っている場合もあり、業務の自由度の高さから海外でも注目の職業となっています。

日本でもアクチュアリーの数理的な知識を活かして、外部コンサルタントとして経営管理や商品開発に関するコンサルティングを行うことも増えてきました。

アクチュアリーになるには

アクチュアリーになる為には、どういった方法があるのかを説明していきます。

「正会員」「準会員」「研究会員」の違いについて

アクチュアリー試験に合格すると、「〇〇会員」という名称がつきます。

合格する試験の段階により呼び名が異なり、企業の募集要項などにもその名称が使われている場合もあります。

「正会員」…アクチュアリーの基礎科目と専門科目※後述に合格している

「準会員」…アクチュアリーの基礎科目の全科目に合格している

「研究会員」…アクチュアリーの基礎科目に1科目以上合格している

試験に合格して「正会員」になる

アクチュアリーになるためには、「日本アクチュアリー会」の「正会員」になる必要があり、「正会員」になるためには、「日本アクチュアリー会」が毎年実施している資格試験に全科目合格する必要があります。更に、プロフェッショナリズム研修(初期教育)の受講が必須になります。

この資格試験とプロフェッショナリズム研修の2つを通過できると、晴れてアクチュアリーになることができるのです。

アクチュアリーの資格試験には「基礎科目」と「専門科目」があり、基礎科目が合格できると翌年の試験で専門科目を受験できます。資格試験は年に1回ですので、アクチュアリーになるには最低でも2年かかります。

保険会社などに「アクチュアリー候補生」として採用される

アクチュアリーを目指している場合、生命保険会社、損害保険会社、信託銀行などが主な就職先になるでしょう。その中でも、「アクチュアリー候補生」の枠を用意している企業があります。その枠に入ることができれば、アクチュアリーへの近道になります。

アクチュアリー業務を行う部署に配属されれば、業務を通してアクチュアリーの知識を身につけることができるからです。また、会社負担で資格試験対策講座を受講したり、合格科目によって手当などの待遇が用意されている場合もあります。

そういったことから、アクチュアリー候補生として採用枠が用意されている企業へ就職した方が、アクチュアリーへの近道になります。

アクチュアリーの試験について

この章では、アクチュアリーの試験について試験の時期や難易度について詳しく説明していきます。

アクチュアリーの試験を受験するには「学校教育法による大学を卒業した者」もしくは「試験委員会が大学を卒業と同等の資格試験受験に必要な基礎的学力を有すると判断した者」が受験資格となります。そのため、アクチュアリーになるためには大学卒業もしくはそれと同等の資格が必要になります。

試験の頻度と時期、開催場所

アクチュアリーの試験は年に1回の頻度で開催されます。

試験の時期は12月です。同年6月末ごろに、アクチュアリー会のホームページに試験要領が公表され、その要領に基づき受験の申し込みを行います。

開催場所は東京と大阪の2か所になるので、行きやすい会場を選びましょう。

試験の科目・合格率

アクチュアリーの試験科目は「基礎科目」と「専門科目」の大きく2分類あります。

「基礎科目」は(「数学」「生保数理」「損保数理」「年金数理」「会計・経済・投資理論」)の5科目からなり、5科目をすべて合格すると「専門科目」への受験資格が得られます。

アクチュアリー基礎科目試験の平均の合格率はおよそ22%と、難易度が高いことがわかります。中小企業診断士や食品衛生監視員と同等の難易度と言えるでしょう。

専門科目においては、およそ15%と更に難易度が高くなり、ITストラテジストや公認会計士と同じような難易度と言えます。

このように、難易度が高く難しい試験ですが、1度合格すると資格を保持しておけるので翌年に同じ科目を受け直す必要がなくなります。

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アクチュアリー試験合格に必要な勉強時間と勉強方法

アクチュアリーに必要な能力・年収

この章では、アクチュアリーに求められる能力や実際の年収などを説明していきます。

日本では年収1000万円が一種の高所得者のボーダーラインとされています。その割合は給与所得者の5%と言われています。

アクチュアリーは高度な専門知識を求められる職業です。実際に求められる能力や年収をみていきましょう。

アクチュアリーに必要な能力

アクチュアリーに求められる能力は、景気動向や経済・政治な環境因子などで未来を予測していくので数学的な知識は不可欠です。会社の企画経営に踏み込むこともあるので会計や法律、マーケティング、コンサルティングなどの能力も必要となるでしょう。また、論理的に説明できる力やコミュニケーション能力も欠かせません。

アクチュアリーの年収

就職する企業や契約条件により異なりますが、だいたいの相場として以下が挙げられます。

基礎科目1科目以上合格の研究会員:500~550万スタート

基礎科目合格の準会員:700~800万

アクチュアリー試験全合格の正会員:900~1,200万

しかし、正会員となり外資系企業で働くようになれば年収2000万円を超えることも珍しくないようです。

アクチュアリーの将来性

この章では、アクチュアリーの需要やAIとの関連性など、アクチュアリーの将来についてを説明していきます。

増えているアクチュアリー需要

アクチュアリーが企業において担う業務は、所属している企業やその業界の根幹を成しています。その中で「保険計理人」という役職のアクチュアリーが保険会社には必ず1人存在します。「保険計理人」の承認なくして保険を販売することはできず、そういった点でもアクチュアリーが一目置かれる理由になっています。

また、保険業界だけでなくさまざまな業界からも需要が増えています。近年では、リスクが多様化していく影響で、説明責任も重要になっていることもあり、リスクマネジメントや年金分野で活躍している人も多いです。

一方で、アクチュアリーの業務は複雑化してきています。専門職としてのスキルだけではなく、時にはその他の分野にも精通していくことが必要と言えます。プラスアルファの知識やスキルを習得することによって、活躍の場が広がる可能性があるでしょう。

AIとアクチュアリーの関係

統計がAIの得意分野であることから、アクチュアリーの仕事がAIで賄えてしまうのではないかという考えが出ています。しかし、アクチュアリーの仕事は統計だけではありません。統計や計算した数字の結果をアクチュアリーではない人、主に経営陣にわかるように説明しなければなりません。

また統計といってもデータをもとに計算するだけではなく、政治や経済の動向なども鑑みて判断する必要があるのです。

そのため、アクチュアリーに関わる全ての仕事をAIに担えるのではなく、自動化できる部分をAIに任せ効率的に業務を行えるようになるといった方がよいでしょう。

国際資格を取得し活躍の幅を広げる

国際会計基準が導入されることによって、今後は既存の業務に加え、資産を時価評価する業務が発生すると予想されます。リーマン・ショックや異常気象、新型コロナウイルスの影響などにより経営のあり方が見直されてきています。そうした今、より定量的なリスク管理とリスクに基づく意思決定が必要とされ、全社的なリスクの測定・統合・管理といった場面でアクチュアリーの活躍が期待されます。

アクチュアリーの将来性についてもっと知りたい方は以下のリンクからご覧いただけます。

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『【アクチュアリー 将来性】』

アクチュアリーの就職事情

アクチュアリーの就職事情について説明していきます。前の章で説明した通り、アクチュアリーの需要は高まり、そして複雑化しています。就職事情はどのようになっているのか見ていきましょう。

新卒採用

学生同士のコニュニティーを作る

まず、就活生同士のコミュニティーを作ることです。アクチュアリー業界は狭く、情報を多くもっていることで就活を有利に進めることができます。就職後も会社を超えた付き合いが続くので、業界のニュースをコミュニティーから得られたり今後のプラスにもなります。

インターンに参加して企業の雰囲気を知る

次に、インターンに参加して企業の雰囲気を知ることも大切です。インターンに参加すると、その会社の人や内部の実情、雰囲気を知ることができます。

アクチュアリーが採用に関わる企業であれば、インターンに参加することで選考を有利に進めることができる可能性もあります。

中途採用

アクチュアリーの転職に関しては、資格取得者や実務経験がある人が採用されやすい傾向にあります。アクチュアリー候補生で転職する場合は、実務経験を積んだ方がよいと言えるでしょう。また、キャリアアップで監査法人への転職を狙う人もいます。

年金アクチュアリーである信託銀行の場合、他の信託銀行に移るといったことは少ないようです。

一方で、生命保険や損害保険のアクチュアリーは、主に報酬面で日系から外資系へ転職する傾向が高いです。

外資系の給与水準は基本的に高めに設定されていますが、日系の倍ほどの差はありません。

アクチュアリーの関連職業

アクチュアリーの関連職業について説明していきます。アクチュアリーと言えば、数理を得意とする人におすすめの職業です。アクチュアリーの関連職業には同じように数理に精通した職業を挙げることができます。

クオンツ

クオンツは、「Quantitative(数量的)」という言葉から派生してできた用語です。金融取引を「経験」や「嗅覚」で行わず、高度な数学と物理学を駆使して市場動向・企業業績を分析予測します。投資戦略や金融商品の開発といった数理分析の専門家です。

アクチュアリーと異なり資格は必要ありません。しかし、求められる理系的知識は非常に高く、採用されるのは難関大学の大学院に在籍するような人がほとんどです。

証券アナリスト

証券アナリストとは、証券投資の分野で国家および企業の財務や業績を分析・評価する金融のプロフェッショナルのことをいいます。

さらに証券会社や資産運用会社に対し、財務諸表などの決算情報を分析、企業へのインタビューを通して投資家に投資対象として適切かどうかの客観的な評価を示すことも仕事です。

国家資格ではありませんが、日本証券アナリスト協会による認定資格があります。

現職からのメッセージ(年金アクチュアリー)

「年金」というと、読者の皆さんはどのようなイメージを持っているでしょうか?

「老人になってからの話」、「まだ若いから関係ない」、といった反応や、高校などの教科書を覚えている人は「将来、年金制度は破綻して、私たちはもらえなくなる」といった印象を持っているかもしれません。

本当は、国の制度である年金(公的年金といいます)は「長生きする可能性(長生きリスク)に備えた保険」ですし、企業な金融機関が提供している「老後に備えた準備をするための商品(私的年金)」もあります。

年金アクチュアリーとしての知識を身につければ「公的年金は長生きリスクに備えた保険である」ということや「企業や金融機関が提供する私的年金をどのように作ればよいか」、あるいは、「公的年金と私的年金をどのように組み合わせれば豊かな老後生活を送ることができるか」ということが判断できるようになります。

言い換えれば、個人の一生の生活設計の指針を示すことができるようになりますし(個人向けの人生設計コンサルティング)、また、企業にとってどのような年金制度を準備すれば事業の発展と従業員処遇の両立をはかることができるかという情報提供(企業向けコンサルティング)を行うこともできるようになります。

年金アクチュアリーには、このように個人や企業に対する幅広い活躍の場が広がっています。是非、チャレンジしてみてください。

まとめ

アクチュアリーの仕事内容に関する記事を読んでみていかがでしたか?

アクチュアリーは数理的な知識と高いコミュニケーション能力を必要とする高度な職業ということがわかります。

しかし、それに見合った年収を獲得できることや、やりがいがあることもアクチュアリーという職業の大きな魅力の1つです。

アクチュアリーの仕事に興味のある方はぜひ挑戦してみてはいかがでしょうか?

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