損保アクチュアリーの會澤先生よりアクチュアリーの成り立ち、試験についての説明、試験対策についてガイダンスをしていただきました。
その内容を完結にまとめたものになります。
アクチュアリーが活躍するフィールドは拡⼤の一途
アクチュアリーとは一言で言えば保険数理業務のプロフェッショナルです。
元々アクチュアリーの起源は17世紀のイギリスにおいて生命保険事業の立ち上げに深く関わりがあります。
当時死亡率の計算からアクチュアリーの概念がスタートしたと言われています。
現在のアクチュアリーについては公的分野では国民年金、厚生年金、社会保険それから企業年金です。私的分野では生命保険、損害保険、健康保険という分野で アクチュアリーの活躍のフィールドは非常に広くなっております。
現在アクチュアリー会には約5000人、正確には2020年3月末に5246名がいます。正会員1844名、準会員が1333名、研究会員が2069名となっております。
アクチュアリーの資格は保険計理人や年金数理人の要件の一つとして挙げられています。
アクチュアリーは100年以上の歴史を持つ専門職制度であるということから、給与や社会からも広く高く評価されております。
アクチュアリーを時代の流れとともに遡ってみると、先述の通り第1世代が17世紀に生命保険からスタートし、20世紀の初頭には損害保険、それから1980年代には資産運用それから21世紀の初頭は ERM(エンタープライズリスクマネジメント)統合的リスク管理という分野に算入しております。
今日21世紀の2020年代になりますとビッグデータに対してデータサイエンスとしてのアクチュアリーの活躍の場が注目されるようになってきております。
このようにアクチュアリーの活躍の場は現在と共に非常に広く深くなり社会との関わりも強くなってきております。
試験について
続きましてアクチュアリーの資格の取得の方法について説明いたします。
日本においてアクチュアリーといえば日本アクチュアリー会の正会員を有しております。
そして正会員の取得資格取得のためには日本アクチュアリー会が毎年実施している資格試験の全科目合格とロフェッショナルの研修の受講が必須の要件となっております。
まず研究会員としては基礎科目の1科目以上合格したもの、それから準会員になるためには基礎科目の5科目すべてに合格した者から、正会員は基礎科目の5科目に合格した上専門科目である2科目に合格することが求められております。
資格試験の概要につきましては下図あるとおり左側に一次試験科目の基礎科目右側には二次試験の専門科目を掲載しております。
まず基礎科目の5科目は数学、生保数理、年金数理、会計経済、投資理論の5科目から構成されております。
それからその5科目が終了した後の試験として専門科目につきましては三つのコースから選択できることになっております。
生保コースは生保1と生保2、損保コースは損保1と損保2、年金コースは年金1と年金2です。
いずれも専門科目を2科目合格することが必須ですが、いずれのコースを選択したとしても正会員の資格としての識別はなく、アクチュアリーとして認められます。
試験会場としましては年1回12月に東京または大阪の会場で受講受験することができますが、特に専門科目について東京の会場に限定されております。
合格率について
各科目別の合格者の推移を下図に掲載しております。
年よってばらつきはありますが概ね20%前後で推移しているように見えます。
しかしながらよく見ると1次科目つきましてはマークシートの選択方式ということもあり年度によって合格率に大きな差異がある場合がございます。
一方で専門科目について毎年10%前後で推移しておりそれほどばらつきがない形になっております。
この表では損害保険損保1と2だけしか掲載しておりませんが、生命保険生保1・2あるいは年金1・2につきましてもそれぞれの業界ごとの論述問題ですのでバランスを考えた合格率の排出を考慮されてるため大体10%前後で推移しているのではないかというふうに考えております。
まとめとしてアクチュアリー試験の難易度が非常に高いとわかると思います。
入会時から準会員までの基礎科目を合格するまで平均5年、正会員になるまでに更に3年ということで合計で平均8年だと言われています。
しかしこの8年の中にはアクチュアリーをチャレンジして途中で挫折したという人は含まれてないことに留意したいと思います。
このようにアクチュアリーになるためには非常に希少性が高く就職に強い資格ということも言われております。
公認会計士や弁護士が現在約3万人と言われていますが、その人数と比較してもアクチュアリーの正会員が現在約1800名ということは非常に少ないということは分かると思います。
日本ではまだまだ知名度は高くないですが、海外では国際的な専門職として社会的地位も高い職種ということが言われております。
損保数理対策の手順
アクチュアリーの試験の勉強法についてご説明いたします。
ご覧の通り日本アクチュアリー会のホームページに過去年度の試験問題及び解答例が掲載されております。
それも無料でダウンロードができるということから皆さんはこの過去問を勉強されることが可能となっております。
1次試験は5科目はありますが、基本的にどの科目でもまずテキスト、あるいは参考書の勉強し演習問題を解く、そして過去問を解く、そしてわからないとこあればまたテキスト参考書に戻って演習問題を解いてまた過去問を解くというこうしたした繰り返しの勉強になると思います。
本番まで最低でもこのグループを5回以上繰り返すことができれば、合格する可能性は高いと言われております。人によっては10回以上繰り返したという人もいます。
しかしながらこのグループを繰り返すことは言うが易し、それほど簡単なことではございません。試験時間3時間を考慮して過去問の10年分を迎えようとするだけでも3時間×10年に5回ループということで150時間かかります。平日2時間勉強し、週末5時間を勉強に費やしたとしても約2ヶ月かかることになります。
そのため今のうちから何月から過去問に手をつけるのかというスケジュールを立てることが非常に重要になります。
時期は早ければ早いほど良いのですけれども、概ね夏休み中には過去問に取り掛かることをおすすめします。
損害保険数理の勉強方法について
先ほど申し上げましたように損害保険数理は数学との親和性が高いので数学とワンセットで学習することをお勧めしております。
これは生保数理と年金数理がやはり親和性が高くワンセットで学習するのが良いのと同じです。
損保数理は損保数理をある程度知らないと解けないような問題が出題されることがあります。
従って社会人になり、損害保険業界に勤めている方は有利な部分があるかもしれません。
学生の方は業界の関係者に聞いたり、あるいは参考書なりネットで調べたりして理解を深めることをお勧めします。
基本的にはアクチュアリー会指定の教科書を過去問を中心に勉強することになります。
初めて学習される方はざっと一通り教科書に目を通してから、教科書の章末問題を解き理解深めることから始めるのが良いのではないでしょうか。
それから教科書一通り終えたらすぐに過去問にとりかかります。
教科書を一からじっくり読もうとすると、途中で挫折してしまうので、まずは一通り把握したら、問題にチャレンジすることをお勧めします。
損保数理を受験するにあたって
数学的な難易度が高く、計算量が多い問題が多く出題されます。
その時は全部とこうとせず、確実に問題を取りこぼさないということが大切です。
そのため初めに全問題をざっと上から順番に見て行って解ける問題にマークをします。
その問題に集中的に取り組むことをお勧めします。
解けた自信と勢いをもって問題を解いていくのが大切なポイントだと思います。
要は合格するために60点以上取ればいいのであって、75点ぐらいを目指す気持ちで取り組めば良いと思います。
そしてもし残った時間があれば、最初にスキップした難易度の高い問題や計算量の多い問題に手をつけることをお勧めいたします。
集中力を維持するためにはってことで、この集中力を維持することは皆さん最初にやはり悩むことだと思います。
どうやって机に向かい続けることができるのかは、まず好きな分野や得意な分野から取り組むのをお勧めします。
単にノートに書き写すだけでも、勉強する習慣をつくることが大切です。
落ち着いて勉強できる環境をつくることも重要になります。
効果的な学習方法
効果的な学習方法とては隙間時間をいかに有効に活用するかということです。
特に暗記問題がありますので公式集なども含めて繰り返し繰り返しそこを頭に叩き込むことが大事です。
できれば1枚ずつカード化して記憶レベルによって ABC ランクをつけて一番理解しにくい記憶できないことを重点的に繰り返し繰り返し学習することで、学習効果を高めることをお勧めします。
初めに立てた学習計画を最後までやりきるための仕掛け作り
学習の妨げになるのは仕事の負担です。社会人であれば仕事の残業や上司の存在です。試験に向かってやるときに限って仕事が忙しくなったり、上司が仕事を振ってきたりすることもあります。
ですから、普段から上司と良い人間関係を築くことが大切です。
そのための仕掛け作りとしては、人事部門それから上司、アクチュアリーの指導者を巻き込んで交換日記などを日々の勉強学習日誌をつけることをお勧めします。
そして理解と協力を得ることは大事だと思います。
また、生活習慣を切り替える事、夜型から朝方への切り替えが非常に重要になります。
それから試験の当日は3時間という長丁場をどうエネルギーを途切れることなく持続させるかが大事ですので、食べ物の習慣も大切です。