アクチュアリー試験の内容
アクチュアリー試験には「基礎科目」と「専門科目」といういわゆる1次試験と2次試験があります。それぞれの試験の内容について説明していきましょう。
基礎科目
1次試験である「基礎科目」は2次試験の「専門科目」を受験出来うるだけの学力があるかどうかを判断する試験で、科目は「数学」「生保数理」「損保数理」「年金数理」および「会計・経済・投資理論」の全部で5科目あります。
アクチュアリー会の試験内容には「第2次試験を受けるに相当な基礎的知識を有するかどうかを判定することを目的とする」とされており、出題範囲も教科書に限定されています。
解答方法はすべてマークシート形式で、「多肢選択」「語群選択」「数値記入」などがあります。
合格基準は満点の60%とされていますが、「会計・経済・投資理論」のみいずれか1分野でも満点の40%に達しなければ不合格となります。
専門科目
2次試験である「専門科目」は1次試験の「基礎科目」全5科目を合格した「準会員」と呼ばれる人たちが受験することができます。
「アクチュアリーとしての実務を行う上で必要な専門的知識および問題解決能力を有するかどうかを判定することを目的とする」という趣旨の上で、教科書や参考書を中心とした出題範囲ですが、より専門的なアクチュアリーの役割および時事問題も出題範囲となり論述式の解答が求められます。
「専門科目」の合格基準は、「生保1」「生保2」「損保1」「損保2」「年金1」「年金2」については、各科目の満点の60%と委員会が認めた以上の得点を獲得すれば合格です。
ただし、それぞれの科目で第Ⅰ部では満点の60%未満、第Ⅱ部では満点の40%未満の得点だと不合格となります。
アクチュアリー試験の難易度と合格率
次にアクチュアリー試験の難易度と合格率について説明していきます。
毎年の試験で合格率には多少の変動はありますが、難易度については大きく変わることはないでしょう。
アクチュアリー試験の難易度
アクチュアリー試験に合格できる難易度はかなり高いと言えるでしょう。
「基礎科目」を全科目合格した「準会員」になるだけでも平均して5年かかると言われており、「正会員」になるには8年かかると言われているほどアクチュアリーは簡単になれるものではありません。
従って、アクチュアリーを目指すには若いうちから計画を立てて長期戦で資格取得に臨むのが理想です。
アクチュアリー試験の合格率
アクチュアリー試験の合格率は以下の通りです。
◆基礎科目
科目 | 合格率 |
数学 | 23.9% |
生保数理 | 32.0% |
損保数理 | 16.2% |
年金数理 | 17.0% |
会計・経済・投資理論 | 22.1% |
◆専門科目
科目 | 合格率 |
生保1 | 13.5% |
生保2 | 18.2% |
損保1 | 12.3% |
損保2 | 16.8% |
年金1 | 15.9% |
年金2 | 13.5% |
見てわかる通り、合格率も低く厳しい試験だというのがわかります。
しかし、1度科目に合格できればそれを保持しておけるので、合格した科目を翌年また受験しなければならないといったことがありません。
試験に臨む人は1年で1科目もしくは2科目を目安に勉強して受験している人が多いです。
アクチュアリー試験の合格に必要な勉強時間
この章ではアクチュアリー試験に合格するために必要な勉強時間について紹介していきます。しかし、勉強方法や習得具合は人それぞれです。ましてや数学の知識を学生の内に勉強しているかでも変わってきますので、参考程度に読んでいただけるとよいかと思います。
基礎科目の勉強時間
基礎科目の勉強時間の目安は1科目200時間程度と言われています。
1日3時間をアクチュアリー試験の勉強に時間を費やしたとして、最低でも2か月はみっちり勉強する必要があります。
社会人の場合は、1日3時間の勉強時間を確保するのが難しい人もいるでしょう。
1日2時間だとすると、3か月超は勉強時間として見積もった方がよいです。
専門科目の勉強時間
専門科目はより専門的な難しい内容になっているので、勉強時間は300時間必要とされています。大半の人が専門科目の試験は社会人になってからが多く、仕事と勉強を両立しながら試験に臨むしかありません。
そういった意味でも、時間の確保はより難しくなり試験の合格に数年かかる場合もあります。
計画的な勉強と対策が必要
試験に合格するには、長期的に計画を立てて試験の勉強をしていく必要があります。
また、社会人になると時間の確保が難しくなってくることから、効率的に勉強することも大切になってきます。通勤の電車や休憩時間などの隙間時間を上手く活用して時間の確保をしていきましょう。
アクチュアリー試験に合格するための勉強方法
この章ではアクチュアリー試験に合格するための勉強法を紹介していきます。
また、最後には実際にアクチュアリー試験に合格した先輩の勉強方法も紹介します。
テキスト
日本アクチュアリー会が教科書と定めているものがあります。
特に基礎科目について、出題範囲は教科書内とされているので勉強するのが得策と言えます。
日本アクチュアリー会が教科書と定める書籍
数学 | ・『入門数理統計学』ホーエル.P.G(培風館)・『基礎統計学(1)/統計学入門』東京大学教養学部統計学教室(東京大学出版会)・『モデリング』(日本アクチュアリー会) |
生保数理 | ・『二見隆:生命保険数学』<上下巻>(日本アクチュアリー会) |
損保数理 | ・『損保数理』(日本アクチュアリー会)(平成23年2月改訂版)・『モデリング』(日本アクチュアリー会) |
年金数理 | ・『年金数理』(日本アクチュアリー会)(平成27年3月改訂版) |
会計・経済・投資理論 | ・『財務会計講義(第21版)』桜井久勝 著(中央経済社)・『入門|経済学(第4版)』伊藤元重 著(日本評論社)・『新・証券投資論I 理論篇』日本証券アナリスト協会 編 小林孝雄 芹田敏夫 著(日本経済新聞出版社)・新・証券投資論II 実務篇』日本証券アナリスト協会 編 伊藤敬介 荻島誠治 諏訪部貴嗣 著(日本経済新聞出版社) |
参考(http://www.actuaries.jp/book/)
上記教科書の他に参考書もございますので、詳細はアクチュアリー会のページをご確認ください。
過去問
一般書籍で販売されている過去問を解くことで試験対策をする人もいます。
過去問では試験の傾向と対策がわかり、教科書の勉強が終わったらひたすら過去問を解くといった勉強方法の人もいるかもしれません。
講座受講
独学の他に、アクチュアリー講座を開講しているアカデミーもあります。
受講のメリットは何と言ってもわからない所を直接講師の方に質問できる環境があるということです。
講師は現役アクチュアリーも多く、試験だけでなく業界についても聞くことができるので業界知識も広がります。
先輩が実際に行っていた勉強法
・直前に覚えたいものは、ノートを作成していました。それ以外は、とにかく過去問を繰り返しました。
・スマホで過去問が見られるので、電車に乗っている間に、紙とペンを使わず頭の中で問題を解く、ということをやっていました。
・参考書は誤植も考えられるので、あまりに計算結果が合わないときはExcelで検算をしていました。納得のいく検証をすることで、「これは教科書が違うだろう」と結論付けて次の問題に進むことができました。
自分自身で各教科についてオリジナルの資料をtexでまとめておく。
時間を無駄にしない効率のよい勉強方法
アク試験を受ける人と解法などを教え合う機会をつくる。
直前期に時間をつくり、詰め込む。
(過去問を徹底的に暗記して受ける方もいるらしいです)
・過去問を繰り返し解くことが、最も効果的だと感じました。20年分くらい、繰り返し演習をしました。
・ウェルチの検定など複雑なものは直前に詰め込みました。
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